スペシャルティコーヒーってなんだ?

スペシャルティコーヒーってなんだ?

山本です

オンラインショップをはじめて一ヶ月
ありがたいことにポツポツとご注文をいただいています
日々コーヒーのことばかりとはいえ、焙煎や諸々の雑務に追われ最近では店頭に立つ時間も随分と少なくなってしまいました
毎日たくさんのインプットや気づきがあって、アウトプットも必要だろうということで。遅ればせながらブログを始めてみます


ニカラグアでみたゲイシャ種の花。とてもよい香りがします

Specialty coffee
スペシャルティコーヒーと呼ばれるものの定義についてですが、じつはとても曖昧なのです
当店も会員である"日本スペシャルティコーヒー協会"の定義をみてみましょう

消費者(コーヒーを飲む人)の手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。風味の素晴らしいコーヒーの美味しさとは、際立つ印象的な風味特性があり、爽やかな明るい酸味特性があり、持続するコーヒー感が甘さの感覚で消えていくこと。カップの中の風味が素晴らしい美味しさであるためには、コーヒーの豆(種子)からカップまでの総ての段階において一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必須である。(From seed to cup)具体的には、生産国においての栽培管理、収穫、生産処理、選別そして品質管理が適正になされ、欠点豆の混入が極めて少ない生豆であること。そして、適切な輸送と保管により、劣化のない状態で焙煎されて、欠点豆の混入が見られない焙煎豆であること。さらに、適切な抽出がなされ、カップに生産地の特徴的な素晴らしい風味特性が表現されることが求められる。日本スペシャルティコーヒー協会は、生産国から消費国にいたるコーヒー産業全体の永続的発展に寄与するものとし、スペシャルティコーヒーの要件として、サステナビリティとトレイサビリティの観念は重要なものと考える。

一言で要約するならは 美味しいコーヒー ということになるのでしょうか
美味しいコーヒーは昔からあったはずですが、なぜ近年になってスペシャルティなの?
スペシャルティ登場以前にもコーヒーのグレード、等級は存在していましたし、今も使われています
ブラジルならば No.2、No.3...
コロンビアならば スプレモ、エキセルソ...
タンザニアならば AA、AB...
グァテマラは SHB、HB...
でもこれって粒の大きさや農園の標高、欠点数しか見ていなかったのです
味に関しては誰も確認していない状態のコーヒーが流通していた歴史が長くあります
たとえばAAより美味しいABとか。普通にあるわけです
日本酒には昔、一級酒、二級酒といったランクがありましたが(今はないです)、日本酒の方が人間による官能評価をしていたぶん、正当に近いものだったかもしれません

コロンビアマイルドという言葉を聞いたことがありますか?
コロンビアのコーヒーはマイルドでおいしいよ! という意味ではありません
アラビカコーヒーの先物取引所はニューヨークにありますが、ここでは コロンビア、ケニア、タンザニアの水洗式のコーヒーをコロンビアマイルド、その他の国の水洗式コーヒーをアザーマイルド、それ以外のアラビカコーヒーはアザーアラビカと呼び、コロンビアマイルドがいちばん上等なものとされていました。今思うとザックリとした区分けです。
ちなみに他の国の等級は産地の標高で分けることが多いですがコロンビアマイルドの3カ国は豆の大きさで分けています。コーヒーは高地で栽培したほうが品質が良いとされています。低地は暑い赤道直下に位置する3カ国でアラビカコーヒーを栽培するためにはある程度の標高が担保されているのです
このへんの話はすごく長くなりそうだ。書いていてそう思いましたので別の記事を近々投稿します

アメリカンコーヒーと呼ばれるものがあります。日本ではコーヒーをお湯で薄めたものが喫茶店で提供されていた時期もありますが、本来のアメリカンコーヒーというのは安く仕入れた生豆を浅煎り焙煎して、濃度を薄く抽出していたものです
これはアメリカ人がそういったコーヒーを好んでいたわけではなくて

  • 安い生豆を (安いから)
  • 浅煎りで (燃料代削減、焙煎時間コスト削減)
  • 薄く(たくさんの液体になるから)
  • 保温ポットで (店舗やオフィスでのオペレーションコスト削減)
こういうものをガブガブ飲みましょう。というものだったようです。当時は冷戦下ですから中米諸国の共産国化を阻止するためにこれらの国のコーヒーを大量に輸入して消費しなければいけなかったという事情もありました

美味しくないんじゃないの?と心配される方もいらっしゃると思いますが、ほんとに美味しくなかったようで1970年代末にはアメリカのコーヒー消費量は減ってしまいます。だってコーラのほうが美味しいですから
そんなアメリカは西海岸で Peet's Coffee and Tea (スタバは創業時、Peet'sから焙煎豆を仕入れていました!)ができたり、1982年にはSCAA (Specialty Coffee Association of America. 2017年にヨーロッパのSCAEと合併してSCA)が発足します

SCAの発足や国連が主導したグルメコーヒープロジェクト(後にCOE、Cup of Exellenceの端緒となります)がきっかけとなって、コーヒーのおいしさを正しく評価しよう!というムーブメントがおこりました
このころのコーヒーのテイスティングは(今もですが)ワイン業界に大変影響を受けています。品種の話、精製方法の話、テロワールの話などはワインのそれと同じノリです。ただ、一部の権威者による評価(パーカーポイントのことです)によるものだけではなくQグレーダーのシステムやCOEのシステムなど、ずいぶん民主的なものです

コーヒー屋さん目線で言うとSCAのスコアで80点でロースペシャルティ、84点以上をスペシャルティコーヒーとして評価しますが、上記のSCAJの定義をもう一度ご確認ください

スペシャルティコーヒーの要件として、サステナビリティとトレイサビリティの観念は重要なものと考える。

とあります。
このコーヒーは誰が作ったどういうものなのかという情報は重要!ということは概念としては認識していました。が、有名農園で云々であるとか有名人が評価したとか、安っぽいブランディングやマーケティングの材料として扱ってしまっていたという反省が僕にはあります
我々はもっとそのコーヒーが持っている物語、Back story も評価するべきだと思いますし、業界もそういった流れになってきています
例えば昨年からなのですがSCAは新しい評価方法であるCVA(Coffee Value Assesment)なるもののβテストをはじめています


エルサルバドルで出会ったピッカーたち。重労働ですが報酬も高いスペシャルティコーヒー農園で働く彼らの表情は明るいです

生産者は一生懸命コーヒーを栽培しています。精製に関わる方、流通に関わる方、そして僕たち日本国内の焙煎業者や抽出に関わる人間。顔を合わせたことはなくても、そのコーヒーに関わった人たちは皆んな仲間であって、チームとしていい仕事ができたとき、そのコーヒーはスペシャルティコーヒーとなります

もし、その一杯があなたにとってスペシャルなものになれるならば。僕たちはとても嬉しく思います

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